糖尿病網膜症・網膜の病気
糖尿病網膜症・網膜の病気
糖尿病の診断を受けたら、必ず半年に一度以上の頻度で眼科検診を受けていただくようお願いします。
初期では、食事や運動などによる血糖コントロールで糖尿病網膜症の悪化を抑えることも可能ですが、病状が悪化してしまった場合は、レーザーによる網膜光凝固術で新生血管の発生を抑制することが必要です。適切な時期に網膜光凝固をうけると、糖尿病網膜症の悪化を止めて、失明を防ぐことが出来ます。しかし、糖尿病網膜症はかなり進行するまで視力が悪化するなどの自覚症状がないという特徴があります。
見え方に問題がないため自分自身では悪化していることに気づかないにもかかわらず、網膜光凝固を行う必要がある病状になっている方も多いのです。さらに、適切な時期にこの網膜光凝固術などを行わないと治療効果が弱く、さらに悪化して失明する危険性が高くなります。
糖尿病網膜症は効果的な治療が可能なタイミングが比較的短期間しかない病気のため、治療のタイミングを逃さないために定期的な眼科受診をお願いしています。しかし、これまでの機器では眼科受診時に散瞳検査が必要で、車で来院できないうえに5時間程度見えにくい状態となるため、定期的な受診ができない方もおられました。
当院では最新の高度な眼底カメラを用いることで、多くの場合に散瞳なしで糖尿病網膜症の検査ができるようにいたしました。
網膜光凝固を行っても、悪化して硝子体出血や網膜剥離、黄斑部の牽引などが確認された場合には、硝子体手術などの高度な外科治療が必要になります。これらの外科的治療が必要な場合は提携病院へご紹介させていただきます。
糖尿病には合併症がいくつもありますが、糖尿病腎症、糖尿病神経症とともに三大合併症と呼ばれているのが糖尿病網膜症です。
糖尿病の影響で、視神経から続く神経の膜である網膜の組織がダメージを受け、視力が低下します。糖尿病では血糖値の上昇があり毛細血管を傷めてしまいます。目の網膜には細かい毛細血管が縦横に走っているため、高血糖の悪影響を受けやすく、血管が詰まる、出血するなどを起こしやすいのです。
また、詰まって血管が機能しなくなると酸素や栄養素が不足するため、新生血管というもろい血管ができて出血を起こしやすくなり、視力の大幅な低下を招きます。
糖尿病と診断されたら半年に一度以上の頻度で眼科の検診を受け、適切な時期に適切な治療を受ければ、糖尿病網膜症の悪化を止めることができます。ただし、眼科検診を定期的に受ける方が少なく、効果的な治療が可能な時期を逃してから治療を開始する方が多いため、日本の中途失明原因では糖尿病網膜症が上位にあります。
糖尿病網膜症は、病状によって3段階に分けられ、治療法も異なります。なお、視力に大きな影響を与える「糖尿病黄斑浮腫」は、3段階すべてで現れる可能性があります。
血糖コントロールで改善できることもありますが、自覚症状がほとんどないため、病気になっていることにご自身では気づくことが困難なため、定期的な眼科検診を受けることが重要です。網膜の血管壁が盛り上がる血管瘤、小さな出血を起こしている程度であり、血管から血液成分が漏れている状態です。
網膜の血管が広範囲に閉塞している状態です。酸素や栄養素が行きわたらなくなるため、新生血管というもろく破れやすい血管ができ始めます。
かすみ目などの自覚症状があることもありますが、全く症状が現れない場合もあります。できるだけ早く適切な治療を受けることで悪化を止める必要があります。
自覚症状がないことも多いため、病気になっていることにご自身では気づくことが困難で、治療のタイミングを逃す方も多いです。
新生血管が破れて硝子体出血を起こし、飛蚊症や急激な視力低下を起こすことがあります。正常な眼にはない繊維状の膜である増殖組織がつくられ網膜を引っ張って網膜剥離を起こすと、視野を大きく欠損させてしまうこともあります。視力を少しでも残すために、できるだけ早く手術などを受ける必要がある状態です。
さらに緑内障も出てくることがあります。この緑内障は血管新生緑内障といわれ、難治性で、失明することも多いです。
網膜中心部には、黄斑というものを注視する際に用いられる場所があります。糖尿病黄斑浮腫は糖尿病の高血糖によって黄斑がむくむ病気で、視界がぼやける、注視するものがゆがむ、暗く見えるなどが起こります。
糖尿病の合併症以外でも黄斑浮腫が起こることがあります。特に、ぶどう膜炎や網膜静脈閉塞症などがあると網膜の黄斑のむくみを起こしやすく、発症リスクが上がります。むくみが続くと黄斑の神経が障害を受けて視力や視野に障害が現れます。
近年、抗VEGF薬の硝子体注射ができるようになり、糖尿病黄斑浮腫は軽減できるようになってきました。当院でも必要な場合に抗VEGF薬の硝子体注射を行っております。
網膜剥離は網膜が何らかの原因により眼球壁側から剥離した状態をいい、裂孔原性網膜剥離は網膜剥離のなかで最も多くみられます。網膜に孔が空き、目の中にある水(液化硝子体)がその孔を通って網膜の下に入り込むことで生じ、剥離が進行するとすべての網膜が剥がれてしまい、放置すると失明してしまいます。
網膜に孔があく原因としては、老化や網膜の萎縮、外傷などがあります。前駆症状としては飛蚊症(小さな蚊のようなものが見える症状)や光視症(閃光のようなものが見える症状)を自覚することがありますが、無症状のこともあります。病状が進んでくると視野欠損や視力低下が起きるようになります。
蚊や糸くずのようなものが浮遊して見える症状のことで、原因には治療を必要としない加齢性の変化や早急な治療を要する重大な疾患までいくつかの可能性が考えられます。見え方からは原因を特定することはできませんので、飛蚊症が生じたらまずは眼科での精査をお勧めします。
網膜の中心にある黄斑部が障害される病気です。症状としては視力低下、変視症(中心部がゆがんで見えるが、周辺部は正しく見える)、中心暗点(真ん中が見えなくなる)、色覚異常(色が分からなくなる)などがあります。
欧米では成人の失明原因の第1位でめずらしくない病気であり、日本でも失明原因の第4位となっています。高齢になるほど多くみられる疾患です。